LRQAのお客様の成功事例をご紹介します。
2007年04月01日
(敬称は2007年当時)
200社を超える東芝グループの中で、ITサービスマネジメントシステムISO20000の認証を一番乗りで取得したのが、東芝インフォメーションシステムズ株式会社の運用センター。ISO20000の認証取得によって、“守りの運用から攻めの運用へ”という組織改革を実現した同社の取り組みをレポートします。

40 年以上に渡り、株式会社東芝をIT面から支え続けてきた、情報システム部門と東芝グループ2社が結集して、2002年に設立された東芝インフォメーションシステムズ株式会社。東芝グループの業務を知り尽くすとともに、豊富な経験により蓄積してきた高度なノウハウ、さらに最先端のITスキルを武器に、システム企画、設計から保守運用まで、一貫したITサービスを提供している。
そんな同社では、設立当初からISO9001などの認証を次々と取得してきた。
「この業界は競争が厳しいですから、他社よりサービス、コストが劣っていれば、東芝グループといえども仕事を奪われる可能性があります。ですから、当社のサービスに何か付加価値を与えなければならないと考え、その一環としてISO9001の認証を取得したのです。」
と同社の代表取締役社長 小柳 順一氏は、認証取得の理由を語る。
しかし、当時、同社の運用センターでは、社員のモチベーション低下という問題を抱えていたようだ。運用センター 次長 鶴田 嘉行 氏は次のように振り返る。
「運用センターは、お客様の業務をITを通して代行するという、とても重要な業務です。しかし、IT技術者にとって花形なのは、やはり開発。運用はオペレーション作業が多く、受身型の仕事となりがちでした。さらに、コストダウンが要求され、業務はさらに厳しいものとなり、運用センター全体のモチベーションが低下していましたね。」
そんな頃、同社開発センター内の運用部門と合併統合することとなり、当時約60名だった運用センターは、約270名の大所帯に。これをきっかけとし、小柳氏の強いトップダウンのもと、組織改革を目指して、IT運用管理のベストプラクティスといわれるITIL、そして、ITサービスマネジメントシステム ISO20000を導入することとなった。その旗振り役となった、常務取締役 明路 伸夫 氏は、次のように語る。
「運用センターは障害を起こさないことが当然と思われていますから、一生懸命にやっていても、評価する基準がなかったのです。また、東芝グループでは、 2000年くらいから、汎用機からオープン系に移行しようとしていましたが、技術の移り変わりについていけず、自信をなくしていた社員も目に付きました。 ITILやISO20000を導入すれば、こうした問題を解決できるのではないか、そんな期待がありました。」
そして、「守りの運用から、攻めの運用へ」という合言葉のもと、1年目は準備期間としてITIL導入、2年目はISO27001、3年目にISO20000を取得するという3年計画で、組織改革のプロジェクトがスタートした。

とはいえ、当初は、このプロジェクトに対する理解がなかなか進まず、マネージャー達の苦労も多かったようだ。アプリケーションシステム運用担当 グループ長 柴崎 栄一 氏は次のように語る。
「ITILやISO20000を導入すれば、業務を効率化でき能動的な仕事の体質に変わる、と考えていましたが、それをスタッフ達に理解してもらうことが、難しかったですね。そこで、まず、成果が目に見えやすい障害管理からスタートしました。障害のプロセスが明確になると、障害件数も減少していき、徐々に勢いづくようになっていきました。」
障害管理については、障害件数が減っただけではなく、メモ書きや口頭での報告から、キチンとした報告書を提出するように変化するなど、報告の精度も高まっていった。それとともに、組織改革プロジェクトへ理解を示す社員が増え、当初は、10だったプロジェクトも、いつしか30を超え、社内は活気づいていった。そして、2006年10月、200社を超える東芝グループの中では初となる、ISO20000の認証を取得した。
「このISO20000の認証取得は、確実に社員の自信につながりましたね。東芝グループの中で初、日本でも10社目くらいでしたから。なぜ、ここまで急ぐのかと思われるかもしれませんが、常に一番先を走ろうとすれば、多くの課題が見え、改善、向上していくことができます。前向きにチャレンジしていかなければ、トップを維持していくことはできないのです。」と小柳氏は力強く語る。
そして、ISO20000認証取得の成果は、様々な所に表れている。以前は、“背中を見て育て”という昔からの製造業の文化が残っていたようだが、現在は、業務プロセスを整備することで標準化が図れるようになった。これによってプロパー社員が属人的にやっていたものを、パートナーに切り分けることができるようになり、さらに、プロパー社員は、一つ上のレベルの仕事に取り組めるようになったという。
そして何より、これまでの受身の姿勢から、社員が自発的に問題提起するような、風通しのよい前向きな組織に変貌を遂げてきたのが、一番の成果といえるだろう。
そして、活気づいた社内には、さらに上を目指そうという空気が充満している。運用企画担当 グループ長 工藤 勝基 氏は次のように語る。
「ISOの認証を取得しただけでは、まだ初心者マーク。それを使いこなして熟練させていき、お客様に評価していただいて、初めて勲章といえます。ですから、このISO20000をいかに風土として根付かせるか、それが我々のこれからの目標です。」
そして、柴崎氏は続けて次のように語る。
「最近は、“ISOは頭から取り払おう”と言っています。私たちは、お客様の要求の変化に合わせて、常に業務プロセスを変えていかなければなりません。ISOは、業務プロセスを変化させるときに、参考にすればいいだけなのです。」
同社では、これまで、ISO9001、ISO20000だけではなく、ISO14001、ISO27001、プライバシーマーク、 CMMIという6つの認証を取得してきた。変化にも対応しやすい組織になったといえる。
「これまでは、小柳社長が種を撒き、それを我々が育ててきましたが、これからは、我々の世代が、種を撒いていかなければなりません。こう考えるようになったのも、ISO20000の認証取得による組織改革のお陰かもしれません。」
と、鶴田氏が語るように、ISO20000認証取得によって、同社運用センターは、“守りから攻めの組織へ”見事に変貌を遂げたようだ。
同社では、人材教育制度に力を入れているが、こうした人材の育成とともに、組織力の向上にISOが役立つと小柳氏は語る。「組織が強くなるには、まず、個人が強くならなければいけません。そのため、当社では人材育成として、経済産業省ITスキル標準をモデルにして策定したプロフェッショナル制度を導入しています。これで個人の力を高め、さらに、ISOで組織のチカラを向上させようとしています。まだ、発展途上の段階ですが、 ISOがもっと根付いて風土化すれば、これほど強い組織はないのではないでしょうか。」
LRQAの審査については、柴崎氏に次のように評価していただいた。
「規格と照らし合わせて重箱の隅をつつくような審査ではなく、運用センターをどうやって効率化していくことができるか、という視点で審査してくれました。ビジネスに役立つ審査というのが、実感できましたね。
LRQA機関紙「Value Eyes」に掲載されている事例紹介記事です。