LRQAのお客様の成功事例をご紹介します。
2009年06月01日
ツネイシホールディングス株式会社
代表取締役 副社長執行役員 森 賢一 氏
内部監査部 部長 岡田 信司 氏
〒720-0393 広島県福山市沼隈町常石1083番地
TEL 084-987-1100(代) FAX 084-987-0336(代)
http://www.tsuneishi-g.jp
海外進出、原価企画など日本の造船業界において画期的ともいえる経営戦略によって、経営躍進を続けているツネイシホールディングス株式会社。同社では、ISO9001、ISO14001を経営と一本化した経営システムとして活用。統合マネジメントシステムが、経営躍進を支えているようだ。
1903年に広島県沼隈郡(現福山市)に創立以来、海運、造船事業を中心に発展を続け、近年、アグレッシブな経営戦略によって目覚しい躍進を遂げているツネイシホールディングス株式会社。2007年に、常石造船株式会社を中心として、造船グループ、海運グループ、サービスグループの3グループ11社を経営統合し、グループ一体となってさらなる拡大を目指している。
そんな同社では、古くから地域貢献を経営目標に掲げ、長きに亘り地元密着型の経営を行ってきたと、代表取締役 副社長執行役員 森 賢一 氏は語る。
「“株主、顧客”の満足度向上を重視することは当然ですが、我々が最も重要と考えているのは “社員の幸せのために事業を継続させること”。ここは田舎町ですから、雇用を守ることが一番の地域、社員への貢献となるのです。過去の造船大不況時に受注が半減しても、雇用を守ることにグループをあげて取り組みました。」
昨今、いわゆる“派遣切り”がニュースなどで大きく取り上げられているが、同社は、正社員と同様に、外注業者、派遣社員の雇用も守り続けてきたそうだ。
地域とともに長い歩みを続けてきた同社だが、昨今、アグレッシブな経営によって、目覚しい躍進を遂げている。その原動力となったのは、“原価企画”と“海外進出”だ。
元々、造船業界では、設計、製造の段階で顧客側から様々な要望が出てくることが多く、設計変更のみならず手配材料の変更が頻繁に起こっていたという。これは、製造の長期化、コスト増につながり、利益率を圧迫させる要因となる。そこで、同社では、調達、製造の前に、コスト、仕様を徹底して固める“原価企画”という取り組みを進めている。以前より、同社では、標準船としてTESS(ツネイシ・エコノミカル・スタンダード・シップ)シリーズを設計、製造していたこともあり、原価企画の取り組みはスムーズに進み、利益率向上、納期短縮、安定品質など、様々なメリットが生まれているという。
同社の躍進のもう一つの原動力となった海外進出も、造船業界では珍しいこと。1994年フィリピンのセブ島に、2003年には中国の浙江省に造船所を設立。現在では、日本:海外の売上げ比率が、1:1となるまでに成長しているという。昨今、円高が輸出企業に大きな影響を与えているが、この海外進出は円高対策にもなると森 氏は語る。
「船価はドル建てとなりますから、2年の製造期間の間に円高になってしまうと、利益は激減してしまいます。これまで何度も円高に泣かされましたから、海外拠点での造船で製造コストをドル化して為替変動リスクを軽減しているのです。」
そんな同社がISO9001の認証を取得したのは、1999年のこと。他の造船会社が次々と認証を取得していたことがその理由だったという。しかし、ISO9001を取得したものの、実際の業務と文書管理などのISO業務を別々に行っていたため、審査時には大きな業務負担となっていたそうだ。
こうした状況が一変したのが、PDCAサイクルで継続的改善を行う経営システムという考え方が導入されたISO9001:2000年版が発行されてからのこと。これを機に、同社ではISO9001を経営の真ん中に据えて、経営と品質マネジメントシステムを一本化して運用することになったと森 氏は当時を振り返る。
「当社では、学園祭型カンパニーを標榜し、全員参加型経営を目指していました。しかし、社員たちのベクトルを合わせて継続的改善を行うような経営システムが確立されていませんでした。経営管理手法としてアメーバ経営の導入など試行錯誤を重ねる中で、LRQAから“ISO9001は2000年版で改訂され経営システムとして活用できるようになった”という説明を受けたのです。ISO9001で経営を回すことが最適だと感じましたね。」
さらに、同社では、2006年、ISO14001をISO9001との統合マネジメントシステムとして認証取得した。
「すでに経営自体をISO9001のマネジメントシステムで動かしていましたから、ISO 14001を取得するのに、別の経営管理システムとして運用すると非効率でしょう。外部審査、内部監査なども2回に分けると、担当者の負担も大きなものとなってしまいます。そのため、それまでのマネジメントシステムにISO14001の要求事項を取り入れて運用しています。」

経営と品質・環境マネジメントシステムを統合した同社では、ISO9001、ISO14001で掲げられる品質目標、環境目標も経営目標と一本化。“経常利益率15%”“売上げ3,000億円”といった経営目標から部門目標、個人目標の落とし込みを行い、目標の達成度、業績によって社員たちのボーナスを決める仕組みとなっている。PDCAサイクルの中で、利益率、売上げなどの具体的な目標達成を目指し、さらに評価、改善を行っていくことで、社員たちのモチベーションが高まり一体感も生まれたと、森 氏は力説する。
「造船の設計、開発には、通常1年以上はかかるのですが、売上げや利益率の目標を達成するために社員たちは自らがやらなければならないことを自覚するようになり、設計、開発などのスピードが上がったのです。また、現場での改善提案も積極的に行われるようになりました。改善提案が多い部門が目標をクリアすることが多くなり、他の部門にもいい影響を与えていくようになりました。」
さらに、マネジメントレビュー時に各部門から出される報告書は、より熱が入ったものになっていると、内部監査部 部長 岡田 信司氏は語る。
「日々の業務をISOの仕組みで行っていますから、以前のようなISO審査のためだけの書類作成はほとんどありません。しかし、経営陣は、具体的な数字を目標として掲げてきますから、経営陣への報告書にも具体的な数字を盛り込みその説明をしなければならないため、担当者の真剣味もより増しています。」
個別のマネジメントシステム運用では、品質、環境の情報収集にタイムラグが生じてしまう。しかし、統合マネジメントシステムによって、経営、品質、環境の情報が同時に経営陣に上がってくるため、迅速かつ包括的な視点で経営判断を行えるようになったそうだ。
また、ISO14001では、リスクベースのアプローチを行うが、同社では、様々な経営リスクの洗い出しを行い、改善項目として取り入れている。昨今、話題となっているBCMS(事業継続マネジメントシステム)についても、すでに3年ほど前から取り入れているという。
「PDCAサイクルの中で、経営リスクの洗い出しを行っていますが、その中で地震発生リスクの対策に取り組みました。実際に地震が起きたときの対応策を策定して、シミュレーション訓練も行っていますね。今後は、新型インフルエンザ対策にも取り組んでいきたいと考えています。」

2007年に同社は3グループ11社を経営統合したが、常石造船で培ってきた統合マネジメントシステムのノウハウを造船グループ6カンパニーへ展開。造船グループが同じマネジメントシステムで運用されている。
こうした統合マネジメントシステムの構築、運用には、LRQAの審査が大きく役立ったと森氏は語る。
「LRQAの審査員からは、我々内部では気付くことのできない、ハッとするような指摘がもらえます。経営システムとして機能させていますから、現場レベルの不具合の指摘はもちろんのこと、経営レベルまで突っ込んだ指摘が出てきます。だからこそ、経営改善にもつながっているのではないかと感じています。中でも、“人事考課まで組み込んだシステムにしないと画竜点睛を欠く”という指摘が、最も印象に残っています。」
数々の先進的な経営戦略による躍進を、マネジメントシステムの効果的な活用が支えてきたツネイシホールディングス株式会社。現在、竣工量は世界6位、国内3位となるまでに成長を遂げている。今後は、売上げ3,000億円を目指すビジョン2010の実現へ向け、さらに、造船業界をリードしていくことが期待されている。

同社では、内部監査部が経営者直轄の部門となっており、より経営陣の意向を反映しやすい組織となっている。 「当然、以前も部門長からの報告が経営陣に上がってきていたものの、部門長のフィルターを通した報告内容 になっていた気がします。内部監査部を経営部門直轄の部門にすることで、経営陣がより各部門の実態を把握 しやすくなりました。」 と森氏は語る。さらに今後は、内部監査をより活性化していくために、内部監査委員経験を経営層へ昇進条件の ひとつにしていくことも視野に入れている。
LRQA機関紙「Value Eyes」に掲載されている事例紹介記事です。