コラム

LRQA情報誌「Value Eyes」やお客様向けメールニュースにてご紹介したコラムを集めています。

最終回 「加圧水系原子炉の検査と欧州排出枠取引制度調査」

2004年7月より日本より初めて出荷される加圧水系原子炉の検査マネジャーの就任を依頼され、明石市に単身赴任する事になり、温室効果ガスに関する講習会や委員会のある度に東京に帰るというような生活となった。この原子炉はフィンランド政府が排出量削減の為設置することを決めたもので、当該国の電力需要の増加による排出量を原子力により削減する目的であった。この原子力による削減はどの国にとっても有効な削減手段であるが、CDMとしては認められていない。それは原子力発電所から排出される放射能が、例え基準値以下にして排出していても、人体に与える影響に関する閾値がはっきりせず、未だ原子力発電所建設が問題なく行えないからである。原子力が問題のない時代になれば、電気使用量の削減が、温室効果ガス削減の有効な手段とはならない時代の到来を意味する。

2005年度環境省の事業として自主参加型国内排出量取引制度が開始され、その一環として「欧州連合排出枠取引制度」(EU-ETS)の調査事業への参加を要請された。以前参加した英国排出権取引制度とどのように違うのかについて興味は十分にあったが、原子炉の検査が忙しく昼夜検査員を管理せざるを得なくなっており、二週間調査期間空けることが出来るかが問題であった。結果として半分の一週間の参加との条件で参加する事となった。

 

訪問先は監督官庁であるDEFRA(日本の環境省と農林水産省が一緒になっているような省庁)LRQAを始めとした欧州系の審査登録機関 数社、ラファージセメント、イネオスフロアー等の各社で、日本が排出量取引制度を施行する場合に参考となるような制度概要、検証機関からの問題点及び事業者からの問題点などについて知見を得た。その際、英国排出権取引制度で手取り足取り教えていただいた人にも再会し、彼及び彼の家族の近況を聞くと共に、EU-ETSの問題点を聞くことが出来た。彼のEU-ETS制度に対する最大の懸念事項は、英国以外の加盟国が問題なくこの制度について来れるかという事であった。EUでは、各加盟国に対して遵守するべき「指令」を発布するが、定められた期日までに間に合わなかったのは「EU-ETS指令」が初めてではと指摘していた。そのように実際に排出量取引制度を開始することは、色々な問題点を伴うものであり、東京都の制度のように多方面から問題点を指摘されたり、わが国が石橋をたたくように試行事業を繰り返すのも無理からぬ仕儀のように思われる。

 

現在、温室効果ガスに関する制度については経済産業省と環境省とで鋭意推進されているが、経済産業省は経済に悪影響を及ぼさない手法開発に力点を置き、環境省は認証・検証の国際整合性を重視して進めようとされている。どちらも重要な要件であり、今後のわが国の2013年からの温室効果ガスに関する制度設計に関して、国の英知を結集して英断を下される事に期待したい。

(完)

 

 LRQAジャパン 地球温暖化サイト http://www.climate-change.jp/

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