LRQAでは、マネジメントシステム運用上の諸課題を解決するために、認証企業様にお集まりいただき、意見交換、事例交換を通じて、解決のヒントをお持ち帰りいただくための「マネジメントシステム有効活用のための検討会」を開催しました。検討会では、ISO事務局担当者の方々から、マネジメントシステム運用について様々な課題、意見が出てきています。そこで、今回は、検討会のファシリテーターを務めた4人の講師たちがマネジメントシステムで経営強化を図るための方策について徹底討論いたしました。
不況下で求められる費用対効果
まず、検討会では、参加企業の 方々からマネジメントシステム 運用の課題について、どのような 意見が出てきたのでしょうか。
- 大饗
- 現在は、マネジメントシステムの認証取得の段階から活用の段階に移っており、また、経済状況が厳しいこともあり、経営陣からマネジメントシステムの費用対効果を求められている企業が多いようですね。
- 寺田
- マネジメントシステムの有効性をどう測ればよいかが、難しいようです。パフォーマンス評価には、例えば不良率や環境負荷といったマネジメントシステムのアウトプットと、マネジメントシステムの機能、という二つの指標があります。パフォーマンスにもいくつかの種類があることを知っていただくと、マネジメントシステムの目的がはっきりとして、具体的な効果を見い出しやすくなるでしょう。
- 坂下
- 普段の業務とISOの仕組みがリンクしていないという声も多く聞かれました。手順書をつくっていても、実際の業務では手順書と違ったやり方をしていることも多いようです。
- 大饗
- 必要のない文書が多いのではないでしょうか。ある企業では、文書が多くなりすぎたために、すべての文書を回収して必要なものと不要なものを取捨選択して、文書が3分の1に減ったという話もありました。
- 水上
- 一度文書の棚卸をして必要なものだけを残す取り組みを行うと、ISO9001の要求事項と日常業務の結び付きにも気付きやすくなります。例えば、車の修理手順がどの要求事項に結び付いているか、あるいは要求事項をやらなかった場合にどんな失敗が起こるのかを理解していただけるでしょう。ISOは失敗事例集ですからね。
- 坂下
- ISO9001とISO14001を両方取得していて、経営陣からこれを統合してほしいといわれているという声もありました。組織の中には、根本となる経営システムがあって、その中の課題として品質や環境があります。つまりマネジメントシステムという仕組みはひとつだということに経営陣が気付きはじめているのでしょう。しかし、ISO9001は品質保証部門、ISO14001は総務部門が担当することも多く、こうした状況で統合するのは難しいかもしれません。
- 水上
- 統合マネジメントシステムを効果的に運用されているある企業では、経営目標と品質、環境目標をひとつにまとめ、すべての責任と権限をひとつの監査部門に集約しています。そこまで徹底すれば統合もうまくいくと思いますよ。
ISOに対する経営陣の理解が不可欠
様々な課題があるようですが、 マネジメントシステムを効果的に 活用するにはどんな取り組みが必要なのでしょうか。
- 水上
- 認証取得されているほとんどの企業では、ISO事務局担当者の皆様がとても一生懸命に取り組まれています。しかし、社員の方々があまり理解をされていないのではないでしょうか。実際の業務を行うのは社員ですから、社員教育は大切だと思いますね。
- 寺田
- 規格の中には個人のパフォーマンスの要求事項もあります。個人の業務がどう組織に影響を与えていくかを理解していただけると、よい成果が生まれてくると思います。
- 大饗
- 最近は、世代交代が進んでおり、前の世代がISOの仕組みを構築して、現在の担当者はすでに出来上った仕組みを運用されていますから、以前に比べてISOの取り組みに受身になりがちです。また、仕組みを構築した際の意図、目的について理解されておらず、ISOの仕組みを練り直すことも難しいのかもしれません。
- 水上
- 時代が移り変わり、構築時に必要だったものが、今は不要になっている部分もあるでしょう。だからこそ、先ほど申し上げた棚卸を行うことが大切だと思います。ISO事務局担当者も、もう一度要求事項に書いてある規格の意図、プロセスの目的を理解していただいて、徹底されると効果が表れやすいでしょう。
- 大饗
- 経営者がISOへの理解が深く、ISOで利益を得たいという想いが強い企業では、PDCAサイクルがうまく回っているようです。経営者の考え方をトップダウンで社員たちに浸透していくことができますからね。
- 水上
- 一方で、経営者が消極的だとなかなかマネジメントシステムは機能しづらいですね。経営者に、ISO9001がどんな目的を持ち、社内でどう運用されているのかを理解していただけるといいでしょうね。
- 寺田
- 特にISO14001は、その目的の幅が広いので、経営者に目的を絞り込んでいただく必要もありますからね。
- 坂下
- 経営者の方にISOに対して本腰を入れていただくことが難しいという声もありますよね。
- 寺田
- そうですね。先ほど申し上げたパフォーマンスの評価の指標と効果を明確にしたり、内部監査でよいアウトプット、改善提言を出したりしていけば、それが経営者に伝わりますから、ISOの効果について理解していただき本腰を入れてもらいやすくなるのではないでしょうか。
- 水上
- マネジメントシステム運用において、内部監査はとても重要で、素晴らしい仕組みです。とはいえ、内部監査がうまく機能していないことも多いようです。
内部監査は疑問を持つことが大切
内部監査を効果的に機能させていくためには、何が必要となるのでしょうか。
- 大饗
- 内部監査は、事務局のチェックリストを見ながら問題点や不適合を見つけるのが目的と考えてしまう方が多いのではないでしょうか。重箱の隅をつつくように不適合を見つけるのではなく、業務の中でマネジメントシステムの有効性を判断して、業務改善のための提言を出すことが何よりも重要なのです。
- 水上
- 有効性を監査することは難しいという方もいるかもしれませんが、ポイントは監査をしている中でとにかく疑問を持つこと。例えば、机が汚いけどそれはなぜ?設計に一週間かかっているけどそれはなぜ?というように、視野を広げて一つひとつ疑問を持てば有効性を見ることができると思いますよ。内部監査は、本人が正しいと思っている仕事をもう一度考え直す機会を与えることが大切なのです。不適合というのはそれほどの数はありませんが、改善の項目は無限です。内部監査という素晴らしい機会を活かしていただきたいですね。
- 坂下
- 本来、内部監査の依頼者は経営者です。しかし、経営者がそこに深く関わっていないことも多いでしょう。最近、LRQAでは、FABIK※という定期審査を提供しています。これは、経営者が感じている課題を抽出していただき、その課題に焦点を当てて審査するもので、より具体的な改善効果を実感していただくことができます。この考え方を内部監査でも導入していくとよいのではないでしょうか。
- 寺田
- 内部監査員は、社内の内情が分かっていますから、運用して10年も経てば外部審査よりもいい指摘ができるようになるはずです。とはいえ、年に一度の監査で内部監査員の質を上げていくことは難しいかもしれません。ですから、毎月とはいかなくても、年に何度も内部監査を実施していただくといいですね。
- 大饗
- 内部監査員の資質も大切ですね。ある程度の権限を持っていて、疑問を持つという考え方をする社員が理想だと思います。とはいえ、内部監査の考え方、スキルを浸透させることはISO事務局にとっても大変なことだと思いますから、そんなときはLRQAの教育研修を活用していただけるといいかもしれません。
教育研修をマネジメントシステム改善のきっかけに
LRQAの教育研修には どのような特徴があるのでしょうか。
- 大饗
- LRQAの教育研修では、実践的なスキルを身に付けていただけます。ただ単に説明をしているだけでは、受講者がおもしろい話を聞いただけで終わってしまいます。ですから、模擬監査やグループ演習、監査報告などを行い、受講者の方がカラダで感じ、理解して、考えてもらいます。
- 水上
- そして、失敗もしてもらいます。教育研修で失敗してもらい、そこから学んでもらい実践で活かすことが大切だからです。失敗学を取り入れた加速度的学習法となっているのです。
- 寺田
- LRQAの教育研修は、LRQAのイギリスで構成されたものです。日本の場合、どうしても自分の教えたい順番で教えてしまいがちですが、イギリスでは受講者が理解するために、説明、講座の順序を的確に体系立てていますから、理解してもらいやすいのです。
- 坂下
- また、少人数制でクイズや質問をしながら、受講者の理解度を把握して、その理解度、習熟度で講義内容を変えていきますから、内部監査員のスキルを上げるという目的に到達しやすいですね。
- 水上
- 何年も継続して受講していただいている企業も数多くありますが、前年度の受講者が次の年の研修では確実にレベルが上がっていますから、内部監査も有効になっているでしょう。また、相手の業務を監査できるようになると、自分の業務も見直せるようになったという話も聞きますよ。
- 大饗
- 内部監査員だけではなく、ISO事務局担当者向けの規格の要求事項解説コースなどもあります。研修を通してISOの本質を理解していただくことが、マネジメントシステム改善のよいきっかけになると思います。不況期だからこそ、マネジメントシステムを有効活用して、経営、業務の改善や利益につなげていただきたいですね。―本日はありがとうございました。